物流倉庫では、荷物が大量に集まると人の力では運べないほどの重量になることがあります。こうした重量物の搬送には、台車やフォークリフトが活用されることもありますが、大きな移動を伴う場合には天井クレーンが使用されます。天井クレーンは頻繁に重量物を扱うため、安全な作業環境を維持するために定期的な点検が必要です。
本記事では、天井クレーンの概要と、安全確保のために実施すべき点検について詳しく解説します。
天井クレーンとは?
天井クレーンとは、建物の両側の壁に沿って設置された走行軌道(ランウェイ)上を移動するクレーンを指します。ランウェイの上を移動するタイプは「軌条形」、ランウェイに吊り下げられた状態で移動するタイプは「懸垂形」と呼ばれます。
天井付近に設置されることから「天井クレーン」と呼ばれ、倉庫では鋼材や鉄鋼製品など、人力で運ぶことが困難な荷物の搬送に使用されます。また、屋外に設置されたランウェイ上を移動するクレーンであっても、同じ構造と形状を持つ場合には「天井クレーン」または「門型クレーン」と呼ばれます。
天井クレーンの種類
天井クレーンには、主に以下の種類があります。
- クラブトロリ式
一般的に広く使用される天井クレーンで、機械工場などで機械や部品の搬送に用いられる。 - ホイスト式
クラブの代わりに電気ホイストを使用し、比較的小型・小容量のクレーン。床上で操作するタイプが多い。 - 製鋼用
製鉄・製鋼業界で使用される特殊な天井クレーン。
また、天井クレーンは吊り上げる荷物の重量によって「吊り上げ荷重(最大吊り上げ可能重量)」が異なります。小型のものは3t程度から、大型のものでは700tに及ぶ場合もあります。
天井クレーンの操作に必要な資格
天井クレーンを操作するには、以下の資格が必要です。
- クレーン・デリック運転士免許(限定なし/クレーン限定)
- 床上操作式クレーン運転免許
- クレーン運転のための特別教育
- 玉掛け技能講習
クレーンの操作に必要な資格と、荷物をクレーンに掛けたり外したりするための資格(玉掛け技能講習)は異なります。そのため、両方を取得することで、安全に荷物の搬送を行うことが可能となります。
天井クレーンの自主点検の必要性
天井クレーンを安全に使用するためには、定期的な自主点検が欠かせません。天井クレーンは鋼材や鉄鋼製品などの重量物を運搬するため、使用状況によっては部品が摩耗しやすく、故障や不具合を防ぐためにも点検が重要です。
労働安全衛生法第45条では、以下のように自主検査の実施と記録が義務付けられています。
事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行い、及びその結果を記録しておかなければならない。
さらに、クレーンの自主点検に関する詳細な規定は「クレーン等安全規則」第34〜39条に定められています。
自主点検には「年次点検」「月次点検」「作業開始前点検」の3種類があり、それぞれの点検結果を適切に記録・管理する必要があります。
- 対象:吊り上げ荷重0.5t(500kg)以上のクレーン(移動式を含む)
- 頻度
- 年次点検:1年以内ごとに1回実施し、結果を3年間保管
- 月次点検:1月以内ごとに1回実施し、結果を3年間保管
- 作業開始前点検:毎作業日ごとに実施(記録義務はなし)
作業開始前点検では記録の義務はありませんが、異常が発見された場合は速やかに補修を行う必要があります。
天井クレーンの自主点検項目
年次自主検査(年1回)
- 構造部分、機械部分、電気部分の異常確認
- ワイヤーロープまたは吊りチェーンの異常確認
- つり具(フックなど)の異常確認
- 基礎部分の異常確認
- 荷重試験の実施
また、厚生労働省の「天井クレーンの定期自主検査指針」では、より詳細な検査基準が定められています。
月次自主検査(月1回)
- 過巻防止装置、過負荷警報装置の動作確認
- ブレーキおよびクラッチの異常確認
- ワイヤーロープやチェーンの損傷確認
- つり具(フックやクラブバケットなど)の損傷確認
- 電気系統(配線、集電装置、配電盤、コントローラなど)の異常確認
作業開始前点検(毎作業日)
- 巻過防止装置、ブレーキ、クラッチ、コントローラの機能確認
- ランウェイやトロリが走行するレールの状態確認
- ワイヤーロープの状態確
天井クレーンの定期点検は、当社にお任せください
今回は、天井クレーンの定期点検についてご紹介いたしました。
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